「検索したらすぐ分かる世の中は面白くない。疑問がすぐ解決するなんてつまらない。調べても分からない、その瞬間にしか出逢えない、【得体の知れないモノ】があってもいいじゃないか。」
と、日本を代表するクリエイティブディレクターの高崎卓馬氏が仰っていました。
高崎氏はフジテレビ広報のお仕事で、「15秒シアター」というキャンペーンを実施しているそうです。
番組表にものっておらず、いつどこで流れるか分からない、突然フジテレビで放映されるたった15秒のドラマ。通常であればティザー的なものや情報をWEB上に用意するけれど、この企画に関してはWEB上でもどこでも、あえて徹底して情報を伏せているそうです。
番組ではなくて、コマーシャルの枠を使い、オリジナルのショートドラマを
放送しようという新しい試みで、番組表には載らずいつ、どの時間帯に
放送されるかも分からない、かつてないスタイルのドラマ。
(「フジテレビが贈る15秒のストーリー」より)
検索しても分からないとなると、さらに気になってしまうもの。「あれは、何?」と情報を求めてTwitterでつぶやいたり、情報をまとめたサイトが作られたり。自然発生的に噂になり、情報が広まり、大きなバズになっているのだとか。
いつ出逢えるか分からない、という方向性をテレビに取り戻したほうがいい。
これはテレビに限らず、あらゆるメディアでいえることなんじゃないかなと感じていたので、とても興味深いお話でした。
文字や印刷技術が発明されて、録音とか録画とか様々な技術が発達してきたことで、情報は「いつ、どこでも、いくらでも」保存・検索・参照できるようになりました。
でも、脳内に記憶できること以外について、本来のコミュニケーションはフロー型だったはず。そういう本能的なところに回帰することに面白さや居心地の良さを感じる動きがあるように感じます。
くだらないダジャレを言ったり、変顔をしたり、半永久的に残したくないけど、でもいま共有したい情報や感情というものが存在して、そのような感情に沿ったメディアが必要とされてきているのでは。
LINEやSnapChatが注目されるのは、そういう背景があるかもしれません。
で、そんな流れの中で、中小メーカーだったらどうする?というところですが、製品の情報をWEBで公開しないというのは、さすがに相当な勇気がないとできないです。「実際にお金を払うんだから、買う前にはちゃんと情報収集したい」というのが一般的な消費者心理ですよね。有名な大手企業ならともかく、知名度が今ひとつな中小メーカーはしっかりWEBで情報公開しないと信頼を損ないます。
発売前のティザーとしてだったら考えられるかもしれないです。メーカーからの情報発信を限定して、一部の人にのみ先行的に情報や製品を提供して周りにクチコミしてもらうとか。うーん、でもこうやって書いてみると、それは大して目新しくない気がします。
いまやっているのは、製品につけるノベルティ(おまけ)についての情報を公開しないでおくという施策。店頭で偶然見かけた方や、実際に手に入れた方がFacebookやTwitterで「製品を買ったら、こんなノベルティがもらえた!」と投稿してくださっています。それを見て、「私もほしい!」「どこで買うともらえるの?」とお客様同士で話題が広がっています。
やみくもに何でも公開することは、必ずしもお客様のためにならないかもしれません。公開すべき情報と、あえて公開しない情報を判断する能力が重要になってきそうですね。
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